Aさんが帰宅途中、電車に乗っていた時のことです。優先席に音楽プレーヤーを聞きながら座っている若者がいました。しかしその前には、背を曲げた高齢の女性が手すりを握りしめていたのです。

若者は席を譲るどころか、目を閉じたまま音楽に没頭しています。その様子を見ていたAさんは『どうして席を譲らないのだろう』と思うと同時に、若者に声をかける勇気もない自分に苛立ちを感じていました・

電車は次の駅に到着し、若者は席を立って電車を降りていきました。その様子を眺めていたAさんは、若者の片が義足であると気づいたのです。

『席を譲るべきだ』と責め心でいたAさんは、複雑な思いを感じました。そして、人を見た目で即断することに恐さを覚えました。

それからのAさんは、相手の話をよく聞き、ただ一点だけを見て判断することのないように心がけるようになりました。

人や物事を一点のみで判断せず、複合的な見方に留意したいものです。

 

『職場の教養』より