企業や店舗を創業する際には、そこに明確な意思があります。時代がどんなに移り変わっても、その企業の存在価値の基本となる意志に変わりはありません。

昭和三十年代のある日、小さなおでん屋内で、お客様の一人から「夏はどうするのですか、暑くてたまらないでしょう」との問いかけがありました。

当時の女性店主は、つつましやかに微笑しながら「夏もおでんですよ。うちは、おでん屋ですから」と答えたといいます。お客様たちはこの言葉に感激し、連日おでん屋に通い、夏は汗まみれになっておでんを食べ、酒を飲んだそうです。

かつての日本は、こうして「商いの精神」がお店を支えていました。しかし今日ではどうでしょう・自社の都合や損得を優先させて、「お客様が求めているものは何か」という部分を軽視するような風潮はないでしょうか。

「おでん屋ですから」というさりげない言葉に、何を為すべきかという強い意志が表われています。創業時の純粋な企業理念を忘れ、御都合主義で営業すれば、お客様は離れていきます。ぐらつくことのない確固たる姿勢を堅持しましょう。

 

『職場の教養』より